2011年12月5日月曜日

ユーロ一考 Part 1

 どうも、石渡です。

 先日、W大学のS田くんとK井くんとこのブログについて話す機会がありました。2人からは、「本当に役立っています」とありがたい言葉を頂き、本当に励みになりました。話していて気づいたのですが、もう少しディベートでどう使うか意識しつつ行きたいと思います。
 また、T大学のT永くんとも話していて、改めて気付かされた皮肉な真実がありました。それは「ディベート界の技術や環境は進歩していても、経済(学)の知識は全く進歩していない」ということでした。
 どうでもいい前置きでしたが、今回のテーマはユーロです。今、世界で熱く議論されているユーロです。おそらく、ワールドを含めた近い海外大会でもそれに関連したモーションが出ると予想しています。もはや、リーマンショックの時と同様にここまでホットなイシューを議論しないディベートは、現実問題に対して考えられうる解決策を議論するというディベートの目的の一つを失ってしまい、ただの机上の空論になりさがってしまうんじゃないかとさえ(極端ではありますが)思ってしまいます。
 とはいえ、ギリシャの財政問題に端を発するユーロに関する議論は成熟しているとは言えず、またこれからもギリシャの状況は予断を許さない状況であるので、僕自身も明確な結論を持ち合わせていません。ということで、以前よりユーロの研究者であった田中素香さん(ユーロ支持者)とジャーナリストの有田哲文さん(どちらかというと批判的な方)の本に依拠しつつ、論を進めたいと思います。
 構成としては、始めにユーロのメリットを説明し、次にギリシャの財政問題を簡単に俯瞰して、最後にギリシャ問題を絡めたユーロのあるべき姿というのを分析していきます。

 ユーロのメリット
ユーロが何なのかについての基本的な知識に関してはウィキペディアや池上さんらに譲るとして、ここではユーロのメリットについて説明します。

    域内経済の活発化
    通貨の安定化
    経済先進国の輸出増加
    基軸通貨としての地位確立
(参考:田中素香『ユーロ』)

    域内経済の活発化
これは、2つの観点から。
イ、個人消費の活発
今までは、マルクやフラン、ドラクマ(ギリシャの通貨)などがユーロ圏内で存在し、消費が思うように伸びませんでした。理由は手数料と為替相場リスクです。前者については例をあげましょう。フランス人が安いドイツ製品を買おうとした場合、彼は両替店で手数料込でマルクを買った後にドイツ製品をかうということになりますが、結果的にはそのドイツ製品が高いということケースもあります。それゆえに、消費が伸び悩みます。しかし一方で、ユーロで統一された後は、そのような手数料はありませんから、遠慮なくドイツ人でもギリシャ人でもポルトガル人でも安いドイツ製品を買えますので、消費が伸びます。
 もう1つの為替相場リスクに関して。いつでも為替相場(通貨の交換比率)は変わるリスク(可能性)というものを抱えています。最近の日本を考えてみると容易に理解できるでしょう。例えば、日本の円はこれから(極論ですが)70円さえも下回る可能性だってあります。その時、旅行者や輸入業者はどう考えるでしょうか。一番良い為替を待つために、消費(交換・輸入など)を控えるでしょう。その結果、消費が落ち込みます。しかしながら、ユーロが導入されてしまえば、消費は伸びます。なぜなら、ユーロ圏内でユーロは安定していて、為替リスクを持っていないですから(もちろん、ユーロ対ドル、円については依然と同様に為替相場リスクは内在していますが)

    通貨の安定化
通貨の安定化というのは、通貨の価値が急激に上がったり、下がったりすることが起こりにくくなるということです。アジア通貨危機の時に明らかになったように一時的な経済上の変化や投資家の行動によって、通貨価値というのは乱高下します(このことがアジア共通通貨の推進の大きな理由だったりするのは余談で)
複数存在す通貨を一つにまとめ、「強いユーロ」になるという詳しいプロセスは、国の信用力といった曖昧な概念や外貨準備高といった専門用語などを使う必要があり、おそらくディベートで求められうるマターを超えると思われるので、説明しませんが、複数存在する通貨を一つにまとめ、「強いユーロ」を作ることで、今まで通貨が不安定であった国に投資を呼び込みます。なぜなら、投資家は投資した企業の国の紙幣(通貨)が紙くずになることを今まで恐れていたからです。その結果、ポルトガルやイタリア、アイルランド、ギリシャ(頭文字をまとめてPIIGSと言われています)にて、大きな投資効果がありました。余談になりますが、オリンピック時にはその経済効果と相まってアテネにはポルシェなどの外車がありふれていたようです。
PIIGSという単語をみて、何か疑問に思った人がいるでしょうが、その疑問の解消はあとで解消します。


(続きます)


石渡慧一 
国際基督教大学卒業、東京大学公共政策大学院修士1年。2009年度ICUDS部長。Australs 2009 ESLブレイク、 All-Asian 2008 EFLブレイク(なお、この年の北東アジア参加者の中で1位)、NEAO 2009 EFL ブレイク、NEAO 2010 ジャッジブレイク

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