2014年1月12日日曜日

紅葉杯2013 モーション解説



 あけましておめでとうございます!そして、お久しぶりです…!(意味深)


本日は、紅葉杯のACの方々にモーションの一部(R3, Pre-OF, QF, SF, GF)について解説していただきました。大会から結構の時間が経ってしまいましたが、参考にしていただければと思います。


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R3: THW decriminalize murder for the sake of cannibalism under emergency circumstances (such as drift, blizzard, heavy natural disaster)

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1. Context/Background
 具体的なContextとしては、「ミニョネット号事件」が挙げられます。また、それと関連して「カルネアデスの板」問題も念頭にありました。どっちも概要はWikipediaに載っているので興味がある方は調べてみてください。(ちなみに少し調べたらマイケル・サンデルの著書の中でも触れられているらしいですね。)個人的には、Pre-Momijiでも出た”decriminalize”というキーワードに」注目しつつ、法学面(緊急避難にあたるのかどうか)、哲学・倫理面(功利主義や法の下の平等、人間の尊厳等)から話してほしいと思っていました。多少ラディカルな議論のようにも聞こえますが、かなり昔からずっと現実社会や法学者・哲学者の間で議論されていた根本的な問題です。少し難しかったかもしれませんが、このような根本的な問題を考えることこそが「そもそも論」を考えることにつながるため僕は有益だと思っています。

2. Suggestions for Government Bench
 やばい、殺人を肯定?!と考えていたとしたら、少し落ち着きましょう。まず、モーションが”emergency circumstance”の”decriminalize”である以上、バーデンの見せ方の工夫はできそうだと思ったら、かなりセンスがあると思います。
 法学面のアプローチである”decriminalize”で基礎となる考えは緊急避難の観点でしょう。詳しい説明は僕なんかのなんちゃって法学部生(笑)よりもしっかりとロースクールや予備試験に向けて勉強している人に譲りますが、刑法や国際法などから言われているのはおおざっぱに言うと「他によりよい手段がないとき、やむを得ずに生じさせてしまった損害よりも避けようとした損害の方が大きい場合」正当化されると言われています。したがってまずは、ディベート的に言う”last resort”をある程度picturizeすることが重要でしょう。Govとしてもrandom killingは肯定しないのは当然なのでContextはしっかりと抑えましょう。いくらモーションに書いてあるとはいえ、「20日間待ったものの食料も底をついた」「連絡手段はない、助けがくる見込みもない」のような具体的なイラストが必要でしょう。次に、避けようとした侵害>生じさせてしまった侵害を、やや功利主義的ではあるものの説明をしましょう。シンプルに多くの人が助かる可能性があがるという説明をできれば良いでしょう。ここで、緊急避難のアナロジーや、場合によっては少し遠いですが正当防衛に言及すると説得力が増すと思います。”murder”のところは普通の正常な状態の人を殺すよりも侵害の度合いはだいぶ違うというラインで逃げるのが良いかと思います。
 このようなラインをベースに、殺そうとしたときに処罰に値するintention/negligenceもなくむしろこの人たちも被害者のような状況であるという説明を加えたり、cannibalismはある程度延命につながる手段であることなどを言及して分析を深めていきましょう。具体的なContextにおいて理論的に説明しやすいのは功利主義に立つGovernmentのはずです。

3. Suggestions for Opposition Bench
 「悪そうじゃん」とは思えるものの、それを論理的に説明することが少し難しいのがOppositionかもしれません。1年生の段階で求めすぎなのかもしれませんが、モーションをしっかり読むと”decriminalize”の反対である”criminalize”をある程度サポートしたいはずで、”murder”と”cannibalism”どちらも否定できることに気づいてほしいです。
 criminalizeするべき理由は何でしょうか。まず、同意があっても身体を傷つけたり殺したりすることはまず違法だよな、というような一般常識を思い出せると楽でしょう。(ちなみに、「指づめ」も違法だなあとかと思い出せるといいですね)少なくとも3つのラインはありえます。(1)”murder”という行為はそもそも非人道的である。殺すという行為自体はしばらく一緒に日夜を共にした人の裏切りであり痛みを伴います。capital punishment等とも異なり痛みは尋常ではないでしょう。(2)cannibalismはそもそも人間の尊厳を奪う行為であり、そうしたものもそもそも法は守っている。さすがにtortureと一緒というのはここでは少し遠い気もしますが、sancity of bodyの話はできるでしょう。(3)法の下の平等を侵害しやすい(だいたい殺されるのは弱いものからだし、そもそも「生きるべき命」と「死ぬべき命」で序列をつくっている)これらがそのままArgumentになっても良いと思います。Governmentは単純な話しかできないので、多角的な視点でHarmを出しつつGovernmentが軽く見せてくる証明責任を重く見せていく努力が必要です。視点はたくさんでるのがOppositionの優越性のひとつであることは間違いないでしょう。
 なお、紅葉杯においては1年生が非常にOppositionが苦労していました。こういう視点がでてくるけれども、説明に困ったというパターンが多いと思います。確かに、「人間の尊厳」というのは説明するのが非常に難しいでしょう。ひとつのコツとしては、Analogyを言いながら実際にこういうときは守られているよね、こういう非人道的なことはしていないよねという魅せ方はありだと思います。また、具体的な状況のpicturizeも確実に必要でしょう。もちろん、それだけでは満足せず、しっかりとロジックも言えるようにしましょう。



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Pre-OF: THBT it is legitimate for states to show the full horror of terrorism.
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1. Context/Background
 今僕はマスメディアの報道についても勉強しているのですが、日本のメディアと海外メディアのひとつの大きな違いとして「どれだけショッキングな映像を流しているか」というのもあります。放送局が自粛する場合がほとんどなのですが、海外では比較的放映されやすい傾向があるらしいです。
 その問題意識をベースに、そういえばディベート界で今や最もポピュラーな音源の一つであるWUDC 2010 Grand Finalの”THBT the media should show the full horror of war.”ってあったなーと思っていてこのモーションが生まれました。ちなみにこの音源は僕の大のお気に入りでMG, MO, OWの再生回数は余裕で3桁になってたりします。
 モーションメーカーの意図としては、海外の音源なり国内の音源なり、研究対象にすることはまず奨励したいなと思っています。スピーチの見せ方だとかはかなり参考になる部分が多いからです。しかし同時に、メッセージとしてこめていたのは「見る・聞くだけじゃなくてしっかり考えろ」という部分です。”legitimate”かどうか”state”としてするべきなのかどうかは、WUDC 2010 Grand Finalとは明らかに違います。「あ、これ、音源で聞いたやつだ!」という進研ゼミ的なのりでモーションをみていると痛い目にあいます。たくさん先輩や同輩などから音源をすすめられるでしょうし、それはぜんぜん良いのですがそれで思考停止にならないでください。また、それはあくまで「参考」にするところであって、ベースは音源以外からのインプットなどが必要であることは留意しましょう。

2. Suggestions for Government Bench
 Governmentとして一番思いつきやすいのは「テロ防止への動きが進む」という話だと思います。この話を立てたいのであればいくつか抑えないといけない証明責任があるはずです。それは大まかに見ても、(1)テロがstateにとってかなり対策しないといけないもの(ex. war on terror等各国は対策をとりつつある。テロは非人道的で起きてしまう前に防がないと多くの命が奪われてしまう、等) (2)見せないといけないcontextがありうる(ex.平和ボケの時、対応が足りないとき。毎回みせる必要は当然ありません。) (3)みた後にどうテロ防止につながるのか、という3つが考えられます。シンプルな話な時はしっかりとどう深堀りするか考えられるといいですね。特に(3)は結構重要なので、しっかりsympathyが生まれるロジック・イラストはしましょう。また、テロのagendaがpublic discourseにおいて結構あがりやすくなるという話はかなり強いと思います。
 これらと付随して、fullにしないとself-censorshipが働きやすい構造などにも言及すると良いでしょう。

3. Suggestions for Opposition Bench
 Oppositionとして視点はたくさん思いつくかと思います。(1)mental harm of viewers, (2)dignity of the dead/familyあたりは最初に思いつくでしょう。ただ、これらの議論は若干単体ではGovernmentのイラストに対抗するのは非常に難しく、インパクトで比較されたときにはなかなかこれらだけで対抗しようというのは難しくなります。
 ここで肝となってくるのが、テロに対するimpactになります。ここで気をつけてほしいのは、oppositionとしてどのようなスタンスをとるかです。現状の報道(言葉とか、最低限の映像で)でいいじゃーんという安直なalternativeの提示だと、governmentにflipされかねません。それでsympathyするっていうなら、そのsympathyの度合いをあげているだけだよと。しかもそれでも、mental harmやdignityあるんじゃないの、どうするの?と強いMGがいた時「ぐぬぬ」となってしまいます。Stanceとは、Alternative/CounterplanとArgumentの間で整合性があってStanceになりますのでOppositionとしてどうしたいのかは気をつけましょう。

 テロをむしろ調子にのらせる・激化されるという話や、アメリカのように盗聴とかもオーケーになってしまうような可能性も秘めているなど、Oppositionが言える議論自体はあります。ただ、Governmentにflipされないか、スタンスとの整合性はあるかはきちんと見極めましょう。



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QF: THBT TV drama from large broadcasting company should include at least one person with disability as an actor or actress.
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Context/Backgroundのようなもの(まず何を考えるか)
モーションのキーワードであるTV dramaとperson with disabilityに関してSQを整理してみましょう。現在、テレビドラマにDisability(以下障害)を持つ俳優はほとんど出演していないと思います。またテレビドラマに限らず、そもそもそういった俳優は、少なくとも視聴者の認識的には、ほとんどいないと言ってよいでしょう。例外的にトム・クルーズなど非常に有名な俳優が該当する例もありますが(トム・クルーズはLD=学習障害)、彼らも自身と同じ障害を持つ役を演じるわけではなく、見た目ではわからない障害なので視聴者も彼らの障害を意識しないか、そもそも知りません。テレビドラマ等の映像作品で障碍者を扱う際、その障害の種類・程度を問わず、演じるのはいわゆる健常者の俳優です。
このような現状を踏まえ、なぜ障害を持つ俳優がほとんどいないのか、そうした状況はJustifiableなのか、障碍者が出演したら何が変わるか、また現在障碍者役を健常者が演じていることはどんな意味を持っているか、などの疑問や問題意識が生ずれば、かなりモーションの意図するところへ近づくのではないかと思います。また、なぜあえてテレビドラマで(しかも大きな制作会社のドラマ、つまり視聴者・社会の注目度が高いドラマで)障碍者を起用せねばならないか、その意図はなんなのかという疑問からモーションのユニークネスを考えていくことも非常に重要です。

Government : Case setting(Context/Definition/Stance)
今回のモーションはValueモーションとしてやっていくことも、細かいコンディションをつけつつポリシーとして進めていくことも可能でしょう。ただケース設定において、障碍者を「少なくとも1人」「俳優として」起用するという指定は、さりげないようで、実はかなり重要です。障碍者をできるだけ多く起用するというわけではなく、また障害をドラマのテーマにするというわけでもなく、なぜ最低一人、障碍者を俳優として出演させるのか。議論の方向性を決めるケース設定は、こうした疑問に耐えうるものであることが理想です。そしてこのケース設定は、スタンスや目指すゴールひいてはディベート全体に影響してくるものでもあります。
例えば僕がオブザーバーとして見たラウンドでは、主要な役ではないが(ストーリーにほとんど関与しない役でも可)他の人々(健常者)の中に溶け込んで一緒に働いている障碍者の役を設定し(具体的には半沢直樹が働く銀行の一従業員等)、彼らの障害ゆえの困難だけではなく、実際に社会で役立てる、役立っているという姿を自然な形で描写する、というようなコンディションがつけられていました。これはモーションの根源的な疑問に答えうるケース設定であり、またそれゆえにスタンスやゴールに直結しやすい、なかなか良いセッティングだったと思います。もちろん他にもいろいろなケースがあると思います。いくつもの選択肢がある中で、モーションの意図を汲んだスタンスやゴールを探り当て、そしてそれらに沿った(あるいはそれらを実質的に内包した)ケースセッティングを戦略的に立てることが重要です。

Government : Argumentation
様々な組み立て方があり得ますが、Philosophyからしっかり立てていくとすると、アファーマティブアクションの枠組みで攻めていくのが正攻法でしょう。民族や女性に対するもの、そして障碍者に対するその他の雇用上の優遇制度をアナロジーとして正当性を主張し、また構造的に障碍者がドラマから排除されていることによって障碍者全体に不利益があること(SQのProblem)、APでそれらが改善していくといったPracticalに結びつけ、社会的なインパクトを出していくのが定石といえます。障碍者も俳優として活躍するチャンスを得られる、そして障碍者を認知する機会が格段に増加することによって人々の理解が進む、そういった変化によって社会の差別意識が緩和されIntegrationが促進される、というのがAPで議論できる一連の内容でしょう。
テレビドラマのユニークネスに関する分析は、このような肯定的な影響を最大限拡大させ、インパクトを出す
ためにも有用と言えます。ただあまり最初からインパクトつまり社会全体の大きな問題とその解決に固執すると、メカニズムを説明するバーデンが重くなるので注意しましょう。

Opposition : Stance/Strategy
真っ向からGovernmentに対抗するならば、そもそも障碍者を出演させる必要はなく、またこのモーションは一般視聴者のニーズに合ったドラマを作るという制作会社の目的に反し、彼らの表現の自由を侵害している、という会社(視聴者)擁護のスタンスを思いつくかもしれません。それでもいいのですが、制作会社(及び視聴者)目線のスタンスは、障碍者を守りたいアクターとするGovernmentに対して、モラル的に不利になりやすいです。障碍者のためにという大きなゴールは共有し、このモーションが障碍者にとってむしろ害である、という立場で進めるのがおすすめです。SQですでにテレビドラマ(及びテレビ全般)は障碍者の権利保護や立場向上に十分貢献しており、even if 十分でないとしてもモーションはCounterproductiveになってしまう、という展開が組み立てやすいと言えるでしょう。もちろんこれが唯一の方法というわけではありません。大事なのは勝つまでの道筋を意識して議論の方向性を決めるということです。

Opposition : Argumentation
害として挙げられるのは、障碍者の役柄が制作側の誤解や偏見によって設定されることで、かえって障碍者に対するバイアスが広まってしまうことなどです。ドラマを面白くすることが制作側の第一目標で、なおかつ障碍者が主要な役ではないなら、配慮するインセンティブがない。「こんなものだろう」と安易に演出されてしまうに違いないといった説明ができると思います。具体的なハームとしては常に障碍者を弱者として描写し、劣った存在という差別意識を増幅させるといった議論があり得ると思います。またもし仮に障碍者をかなり重要な役・目立つ役で起用せねばならなくなれば、障碍者というだけで(人気俳優を押しのけて)主要なテレビドラマに出演しているなんて、という反感が広がるという議論を展開することも可能でしょう。また今回おそらくターゲットとなる障碍者に無関心な人々、差別意識を持っているような人々は、よく知らない障碍者が出演していても興味をもたないか反感をもつだけ、むしろ人気俳優が主役かそれに準ずる役で障碍者を演じていれば興味を持つし、その俳優に好感を持つからこそ、結果的に彼ら彼女らが演じる障碍者にもより共感するようになる、だからSQの方がbetterであるという説明も効果的でしょう。



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SF: Assume that a technology enables individuals to be sent to a virtual world. (It is like a crazily advanced videogame.) There, individuals can experience whatever it was programmed by the computer. It is basically same as the ordinary world in a sense they feel pain, emotions, and can even die. All of the memory in the virtual world remains, but they will not be physically hurt in the real life. (ex. even if they were killed in the virtual world, they will not die in the real world.) THW make convicted criminals experience how his/her victim(s) was/were damaged.
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Context/Background:
 僕は映画「マトリクス」が好きなのですがそれをヒントに着想しました。最近の技術発展はすごいもので、視覚・聴覚だけではなく、5感の残りでもリアルさを提供しようとしています。ゲームセンターの一部のゲームや、某巨大テーマパークのアトラクションなどで皆さんも実感していると思います。
 それと、「目には目を」のような犯罪者に対する感情ってそういえばあるなぁと考えていました。勉強会で死刑廃止の議論をしたのですがそのときもこういった議論は多く、こんなにそういうファクターを重視するのか、なるほどと思いながら聞いていました。じゃあこれってモーションになるんじゃないかな、と、「これってトリビアになりますか?」のようなのりで頭の中でくっついてこのモーションが生まれました。
 紅葉SFという特性を考えると、みんな多くの場合初めてのブレイクラウンドで緊張しているのかなあと思ったこと、また、Assumingモーションの場合は前提が変に違って議論がずれることを避けたいという思いでモーションが長くなりました。(ex.)のくだり等はいらないとは思いますし、丁寧に説明しているため削ることもできたとは思いますが、「伝える」ことを重視した結果長くなってしまいました。
 なお、KIDAという大会で似たようなモーションが出ていたらしいのは残念でした。とはいえ、この広いディベート界では同じような着想を持つことはありえると思うので仕方ないですね。また、”convicted”にも結構意味を持たせたつもりではあります。
 ちなみにこれも、R3に引き続き「根本的な問い」を考えるチャンスになります。CJSといえば、多くの人がとりあえずRetribution/Deterrence/Rehabilitation/Isolationを並べようどやぁという「ディベ中2病」に陥ります。こういうクッキーカッターは導入としては問題ないのですが、それらがなぜ大事なのか考えたり、それ以外に意図はないのかだとかを考えてはじめて意味を持ちます。思考停止に陥らないように気をつけましょう。ここでは便宜上わかりやすいと思うのでその4類型をベースに話は進めます。

Suggestions for Government Bench:
Retributionの意義からまず確認しましょう。そもそもなんでRetributionが大事なのでしょうか。なんとなく社会・個人の被害があるからというところから発想はできますが、それはまだアイディアでありArgumentにはなっていません。しっかりと意義は話しましょう。そしてそこから、なぜこの方法なのかという説明にうつると思います。「目には目を」というのは一番国民や被害者が納得しやすいということが思いつくと比較的きれいにつながりやすいと思います。多くの被害者が「同じ目にあわせてやりたい」「死刑が決まって殺された娘も喜んでいると思います」などと発言していることからも、感情的な修復にもつながりやすそうですね。被害者にスポットライトをあてるのであればここ数年被害者の参画やケアという概念が広まっているため(なお、日本はここに関して施策が不足していると批判されています)そのあたりと絡めて強いArgumentにすることができるでしょう。
 また、Deterrenceに関しても初犯・再犯に分けて説明することができるのではないでしょうか。後者に関してはRehabilitationとリンクさせると良いのではないでしょうか。Isolationは今回あまり影響がなさそうなので省きます。
 さらに、うまくvirtualだということを利用して、線引きを勝ちに行きたいところです。Govとしてもdeprivation of fundamental human rightsは否定したいはずなので。実際死なないということがどういう意義を持つのかをしっかり説明しましょう。

Suggestions for Opposition Bench:
 OppositionはRetributionの限界というのを人権との兼ね合いで説明していくのが出発点だと思います。現状でtortureなどをせず、しっかりと人権を守ることは必要です。かつ、physicalなものだけではなくpsychologicalな部分までその権利は及んでいるという説明をした後、今回はやりすぎというイラストが必要になります。ここでキーとなるのは、「被害者感情」を基準にしてはいけないという議論を立てられるかです。被害者感情は確かに修復しないといけないものですが、それを現状刑罰の世界に持ち込んでいるかは少しリサーチをしてみましょう。また、少しユニークなラインとしてはirreversibleな刑罰は基本的には行っていけないという話もできると思います。死刑とパラレルに話しておくと、面白いと思います。
 また、他にもrehabilitationに悪影響がでたり、むしろantipathyが大きくなって再犯につながりやすいだとか、またはショックを受けすぎて社会復帰ができなくなってしまうだとか、色々な話がOppositionは展開できると思います。



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GF: THW criminalize NGOs that bribed regional armed groups in order to guarantee their safety.
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コンテキスト
 まず、モーションは、「自分たちの安全を保障するために、地域武装グループに賄賂を渡したNGOをcriminalizeする」という意味です。紛争地域で活動しているNGO団体の要員が殺されたり、拉致されたりすることがあることはニュースなどで放映されたりするのでお分かりいただけると思いますが、そのようなことにされないためにNGOがその地域の武装団体に金銭的、物質的な支援を行い、その対価として要員の安全を保証してもらうことがある(逆に武装団体から要求してくる場合もあったり)と聞いたことがあったので、それをベースとしてモーションを作りました。
 モーション自体はよくある形態をしていて、いわゆる「criminalize paying ransom」モーションと似ています。アーギュメントの展開の仕方もそのモーションと似ていて、コンテキストだけ把握できればある程度容易にプレパを進めれるようにしました。GFでしくられてもまずいので…笑

ガバ
 ガバ側に注目してほしいのは、「NGOがあげた賄賂が結局どう使われるか?」だと思います。紛争地域のコンテキストにおいてのRegional armed groupsは、いわゆる反乱軍やテロー団体で、その地域の政府と紛争中であります。それをベースとして考えると、NGOからの賄賂はその反乱軍やテロー団体の武器・食糧などに変わるというところまでロジックをつなげることができ、最終的にはその地域に住む人たちや国家の治安などに悪影響を及ぼすというところまで落とすところができると思います。たとえばロングタームで見て、「賄賂でお金もらう→強くなる→ほかのNGOとかを殺したら拉致したりする→悪化」と「賄賂が減る→弱くなる→殺人や拉致自体が減って安全→もっと助けれる」を比較して見せれれば強いかなと思います。あとは、ここで地域武装グループが及ぼす悪影響に対するイラストレーションを実例などを入れて説明できれば、もっと強い印象をジャッジに残せると思います。
 その次には、その「悪影響」を「criminalize」するところまでつなげる必要があります。上で言及した「悪影響」のイラストレーションを利用しつつ、NGOがその「悪影響」まで至るConsequenceを簡単に想定できる・確信できるというところから伸ばしていくのもいいと思います。
 
オポ
 オポとしては、まずガバが提示してくる「悪影響」アーギュに対応する必要があると思います。たとえば、地域武装グループのイメージを変えて、NGOからのお金がちゃんと地域の市民にまでいきわたるロジックを説明してガバのアーギュにカウンターできれば強いかなと思います。実際、兵力の動員などの理由で地域の支持を気にする必要があり、そのためある程度の資金を地域に分配しなければいけないなどの話ができて、反軍が新しい福祉制度を導入するなどの実例もあります。そこから自然に「賄賂を使ってNGOが安全に入って人を助ける」のロジックまでつなげて、「NGOはこうやって人助けてるのになぜcriminalize?」というところまで落とせると思います。
 その次には、ガバの「criminalize」に対応しなきゃいけなく、オポからは「意図はよかった」ことや「間接的」であることなどを強調してガバとクラッシュさせればいいかなと思います。



以上が解説となります。ありがとうございました。

紅葉杯2013 Adj.Core
Yongrak Jeong
Akira Kato
Yuka Sasaki
Masaya Harata
Hisateru Heike

2013年2月28日木曜日

Whipをはじめてする人へ その4


番外編

こんばんは。Asianの大会ではやくも1年生チームがブレイクするというとっても嬉しいニュースが飛び込んでくる今日この頃ですね。その一方で、「あのー今度の大会でWhipをするかもしれないんですけれども…」というちょっと不安な声も聞こえてきます。今回は前回までと体裁を変えてよく聞く質問について、少し書いてみたいと思います。

   Whipってプレパ何したらいいんか分からないんですけど。」
       「Whipっていつ原稿とか用意したらいいのか分からないんですけど」
      WhipってNewを話すべきなの??話しちゃいけないの??

    

 

よくある質問 第1位「Whipってプレパ何したらいいんか分からないんですけど。」

 

 確かにAsianのプレパは30分と長いですし、OWだと結局motionリリースされてから話し始めるまで1時間以上あと。しかもRefute専門~なんて考えていると相手の出方次第だから何したらいいのか分からないなあなんて考えてしまうかもしれません。

 ですが…

大切なこと=Whipだからといって特別なことは何もない!!という意識を持つこと

 前回まで書いてきた内容をよろしければ思い出していただきたいです。Refuteをする場所について考える時に使った概念等は決してRefuteに特化した概念ではなく、コンスト、というよりはDebate全体をマクロに見る時にも使う概念だったように思います。プレパが始まって考えることは今までのプレパと大きくは変わらないはずなのです。Whipもスピーカーの一つなわけです。

 

 これを読んでくださっている方は、いつもプレパが始まる時に何から考え始めますか??

私は、なんでこのmotionなの??このmotionなんなの??ということをBPでもNAでも最初に考えていました。それなのに初めてWhipをさせてもらった時の大会では、プレパが始まった時に何か特別なことを考えなくちゃいけないと焦ってあわてて相手の言うこと個々について考え始めてしまったりしていました。しかし、よく考えてみると、今までの自分なりのプレパにおける思考の方法とか順序とか、そういうものが一定あるにもかかわらず、ロールが変わったからといって、むしろ慣れないロールをしているのに、いつもと違う思考方法をするというのは二重の非効率のもとだったようにも今になっては思います。ですから私自身はAsianWhipをする時にも必ずなんでこのmotionなの??このmotionなんなの??と、とりあえずは考えることにしています。

 

 ロールを変えたことでプレパまで大きく変えなきゃいけない、そう考えていませんか??

ロールが変わったからといってディベートでやらなきゃいけないことは変わらないはずです。

 

質問への答えは

Whipのプレパと身構えずに、今まで通りのプレパに立ち返ってみてください

②プレパで焦るのがいやなら、自分がmotionを見てまず最初に何を考えるのかを決めておいてみてください

 そうすることできっと焦って無駄な時間を過ごすこともないでしょうし、そのラウンドにおいて何をかんがえなくてはならないのか、見えやすくなってくるかもしれません。

 

 

よくある質問 第2位 「Whipっていつ原稿とか用意したらいいのか分からないんですけど」

 たしかにRefuteをする比率が多い以上、相手の言ったことをカンファメしてRefuteしてクラッシュに組み込んで…となると忙しいですよね。直前に準備したいものの、ラストのスピーカーである以上、直前のスピーカーへの反論はドロップできないから聞かなきゃいけない(これはかなり重要なロールの一つだと思っています。)

となると、一体いつ準備したらいいのか分からなくなってしまうのも当然なんじゃないかな、と思います。

 準備ができない、という切迫感の裏には、Whipはやることが多いし直前まで用意できない、という観念があるかと思いますが、これが本当なのか、少し考え直してみてください。

 

  以下大まかなロールベースで見ていきましょう。

 クラッシュ…プレパ中に大まかに予想できたら、ラウンドが始まってからあわてて考える必要はありません

よね。じゃあどうやってクラッシュを予想するのでしょう??

 

 原理的に考えれば、クラッシュは相手と自分がぶつかるところである以上、LOが最初に反論するところがクラッシュになるはずです。(だからプレパ中にクラッシュについて考えられなかった、どうしよう、という時にも、相手が上手なLOなら最初に時間を割いて反論した所に注目すれば自然とクラッシュは見えるはずです。)

 クラッシュを予想するのは経験に基づく場面もあります。この時に役立つのはJudgeさんにもらうリフレクです。Judgeの方がクラッシュベースでRFDを言う時それにしっかりと耳を傾けてください。ここに言うしっかりと聞くというのは、ただメモをとって頷くとかそういうことではなく、なんでJudgeの人はこのクラッシュをクラッシュにしたのだろうか??と他の言動の端々から考えるということです。そして自分の見方とどう違うのかを考えるということです。

 勿論そうした原理や経験を積むというだけではなく、

 個人的に大切だと思うのは、それらを自分が使える形として、持っている、ということです。

 個々のroundを復習することは絶対に必要だと思いますが、そこだけにとどまっていてはそのほかのroundには対応できない、ということになります。つまり一つ一つのroundから一定の捨象、類型化を行ったうえで自分なりの形を持っておけば、Motionが始まってからああでもない、こうでもない、と考えずに、自分が類型化した枠の中で当てはめてみたり、その枠を基本として考えてみることも可能なのではないか、と思います。

  そしてこの作業はmotionがリリースされる前に完了できる作業のはずです。

 

もちろん、クラッシュは予想するだけのものじゃなく、作るものでもありますから、パートナー

とこのディベートはJudgeの人にどう見てほしいのか、という部分について、十分に協議する必要があります。これはmotionがリリースされてからでないとできない作業ですが、この作業でさえも、プレパ練などを通じてパートナーとの思考や相性なども考えることが出来れば

一定はmotionがリリースされてからの負担を減らすことが出来るかと思います。

 

   反論…確かに相手が言わなきゃ反論は予想できない、と考えがちですが、決してそうではないと思います。

      ここで注意していただきたいのは、数うちゃあたる方式から的を絞る思考に転換することです。

      相手の言うことを枝葉末節まで予想してすべて切りきるスーパーディベータ―の方もいらっしゃると思いますし、実際私はいらっしゃると思っています。ただそれをみんながみんな最初から出来るわけではない。だからこそ、本当に太い相手のlogicはどこなのか、と考えてそこへのRefuteを集中的に行うことが必要とされているのだと思います。簡単に言うと、優先順位の問題です。

やることが多いと思うなら、やるべき反論に優先順位をつけましょう。

      この優先順位の付け方はこれまで説明してきた概念(Bottle Neck)等で考えることも可能だし、直感的に相手のここが強いな。ここが分かりやすいな、と思う部分がおそらく優先順位の高いRefuteの部分になるのかと思います。こうした部分について一度に考えることは確かに不可能ですが、概念や考え方について、身近にいる先輩に質問したり、練習の後、リフレクを振り返りつつ、優先順位をつけなおすなどしていくうちに、少しずつ優先順位は的確につけられるようになるのではないかなと思います。

      優先順位がつけられれば、その順位の高いところへのRefuteをプレパのうちにいくつか考えておくことも可能かと思います。そうすることでラウンドを見る際に一定の軸が出来るし、ふわっとした話になりますが、まだ何も準備できてない、という心構えよりは少しゆったりとした心構えでラウンドに臨めるようにも思います。

 ここに列挙したのはあくもでも一例です。

  人によって課題が違う以上、ラウンド前に準備しておかなければならない事も違うとは思います。

    ただここで強調したいこと、そして質問の答えはすごく単純で

  いつ用意したらいいか分からないほど、直前が忙しいのなら、むしろmotionリリース前に自分なりの、そして自分だけもプレパをして見るのもいいのではないでしょうか??

ということです。

 

よくある質問第3位 「WhipってNewを話すべきなの??話しちゃいけないの??

 

 こんなリフレクをしてもらったことはありませんか??

  Whipが何も新しいこと言わなかったよね、繰り返してただけだよね?」

  「WhipからのmatterNewすぎて取れない、あまり強く考慮できない。」

 

 私は去年こういったコメントをリフレクのコントラだと密かに呼んでいました。Newなことを言っても

言わなくてもだめ。結局はバランスが大切という、初心者には正直何の助けにもならない結論にしか到達しない。そこで少しリフレクを解体して考えてみましょう。

 

Whipが何も新しいこと言わなかったよね…‘何も’

→直前のスピーカーに対する反論は、それがスピーチの一部であってもNewになるのでは??

 

繰り返してただけだよね…‘繰り返し’

 →ワーディングを変えるだけでも繰り返しではなくなるのでは??

  パートナーが言ったことを、相手とのコンペアの形式で示すだけでも繰り返しにはならないのでは??

 

matterNewすぎて取れない…‘すぎて’

NewでもNewすぎなきゃとれる

 NewmatterNewっぽくなく見せる

 (相手への反論の形で示すことは、これまでのroundと絡んでいる感じを出せる点でNewっぽくないのではないか??)

 

このようにJudgeの方のリフレクを考えたり、繰り返し見直したりしていくと、そのコメントが決してコントラなどではなく、それぞれが指すNewが性質的に異なっていること、そしてNewの性質は見せ方次第である程度操作可能なのではないか、と考えられます。

 

上記のように考えた私個人として思うのは

 

 WhipNew matterを必要ならどんどん出すべき、それがラウンドにおいて必要ならそうするべき。

 必要なことがベンチから出なきゃ、いずれにしろ負けてしまうので。

 勿論不必要にNewを出すことよりは、直前のスピーカーの‘New’な部分に丁寧に反論するべき。

 

 ただそうしたNew matterは、

 それまでのroundと何等かの形で絡めることでそのNewという性質を和らげることが一定可能で、

 絡める、という典型的な形態が反論になるのではないか 要はデリバーの問題

 

という所です。

ここの部分に関しては、自分なりにある程度納得できる基準を持って、ラウンドをしてみて、そしてラウンドの後にリフレクをもらって質問して、そういう過程で自分なりの基準を修正していくのが良いのではないかな、と思います。私自身も軌道修正の最中で、まったくをもって短い言葉で質問への答えを表現することができないのですが…

 

以上、なんとなくですが、よく聞く質問、そして自分自身が去年の今頃よくしていた質問とそれに対する見解を書いてみました。前回までの記事よりも個人的な見解や主張が強くなってしまいましたが、それでもこうした一つの主張などが、Whipを考えたい、と思った時の一つのたたき台になればいいな、と思います。

 
読んでいただきありがとうございました。

Whipをはじめてする人へ その3

 こんばんは。タイテックカップなどで初めてAsianの大会に出るという人もいるのではないでしょうか。OB、OGの方と組ませていただくのは貴重であるだけに、緊張してしまったりすることもあるかもしれませんが、出場される方が日頃の練習の成果を発揮できることを祈っています。(*^^*)


 

          先週までの流れ

0.はじめに なぜRefuteが大切なのか??

.Refuteにおいて何が大切なのか??

.どこに反論するのか WHERE TO REFUTE ??

A.反論する上で理解しておくこと
        
   B.どこにRefuteするのか、方法論

 




.どう反論するのか HOW TO REFUTE ??

 どこに反論するのかを考えた後、次に大切なのはどのようにRefuteするか、です。Refuteをどうするか、基本はアーギュメントを言うときと同じく分かりやすくいう事です。プラクティカルなら可能ならAREAで説明するように心がけたりするとよいでしょう。ただ自己満足的に相手を切るのではなく、Judgeに切れていますよ、相手の言っていることは違うんですよ、と伝わっているのかどうか、という視点から考えることが大切です。

この前提を押さえた上で具体的にどのように反論するのかについて汎用性の高いものを中心に見ていきます。

 

1) Philo.の切り方

 Philo.を切るのは2通りあります。①相手のcriteriaを否定する、②相手のcriteriaを認めた上でapplicabilityを切る。この2点です。そもそもPhilo.というのは基本的に線を引くもの。①ならその線引きの観点自体が違うといい、②ならその線引きの観点はあっていても、このmotionのケースにおいて違うのだということを言う、ということになります。ただし③もちろん例外もあります。

 Criteria自体を否定する時

  この方法は経験上難しくまた数も少ないと思います。なぜ難しいのかというと、相手のcriteriaが間違っているということは、すなわち自分たちの側から新しいcriteriaを提示することになり、ついつい自分たちのcriteriaを押し付けているかのようにJudgeがとりがちだからです。この時自分たちの押し付けRefuteを避けるためには、相手のcriteriaの反例を提示し、さらに相手のcriteriaの観点があっていたとしても、その線引きの場所が間違っている、すなわち高いラインが必要であり、今回のケースにおいてはそのバーを越えていないのだというRefuteをした上で、自分たちの新しいcriteriaが正しいという見せ方をするのが良いでしょう。

 Ex) THBT attempted crimes should have the same punishments as those that were successfully carried out.

  結果無価値論と行為無価値論という法学上(特に刑法上)でも二つの価値理念がぶつかります。つまりintentionPunishmentcriteriaになるというGov.consequencePunishment criteriaになるというOpp.というのが基本のラインかと思います。Opp.consequenceが大切という話に対してGov.としては、現状でconsequence以外がcriteriaになっている反例、例えば自動車事故の過失致死犯のうち相当の注意をもってもその事故をさけることができなかった場合などに減刑されている例などを持ち出してConsequenceだけがcriteriaではないことなどを示し、さらに相手の言うconsequenceが大事な理由が相手のベンチをuniquesupportしているだけでなく、rehabilitationの観点からこちらもサポートしえるとフリップするのが一番engageしているように見えるかと思います。その上で自分たちのアーギュメントを立ててあげるのがいいのかな、と。さらに言うとapplicabilityの観点からもRefuteできて、Opp.の言っているconsequenceの不確かさ、すなわち結果的には未遂犯になったけれどそれが未遂になったのはたまたま拳銃の操縦技術的に技術がなくて銃弾を外しただけ、などのような、caseを具体化することによって相手のいうcriteriaが正しかったとしてもその行為の結果と行為自体の連関が薄いことを示して相手の言う話を一定削ることもできそうな気がします。

 criteriaを否定せずにapplicabilityを否定する時

  Philo.Refuteする時はだいたいがこの形のRefuteになることが多いように思います。というのもまず前のスピーカーが立論する時点で割とapplicabilityが薄くなる傾向があり、さらに言うとcriteriaに反論するよりはRefuteしている感じが出しやすく、自分たちのアーギュメントやstanceから派生するRefuteが出やすいことなどがその理由です。

 Ex) THW legalize prostitutions.

  もちろん色々なstanceをとることは可能(例えばPractically good だけでいくなど)ですが、例えばGov.なら、choiceの話、つまりRationalCompareできる限りは一つのchoiceとして認められるべきという話ができると思います。恐らくBoxerConstructive citeWorkerの話がアナロジーとして上がりますね。この時どうするのか。Opp.はおそらくこのRationalitycriteriaになることは否定はしません。だけどこのケースにおいてrationalじゃないこと、つまりapplicabilityのところを否定することになります。ケース設定がthird worldなら、人々がお金に苦しんでいればいるほど先のことまで考える余裕がないとも言えますし、家族からのプレッシャーがどう働いているのかなどを具体的に説明することで十分有効なRefuteになると思います。

 ③上記の例外

 例外といっても結構多いのですが、philo.自体にRefuteできない場合があります。どういう場合かというとそれが完全にPracticalに依存している時などです。

 Ex) THW introduce a universal basic income.

 いろいろな分析が出るとは思いますが、Gov.ならGovernmentCitizenStableな生活を保障するべき、というPhilo.が出てくるかもしれないと思います。この時重要なのは、いくらPhilo.が立っていても本当にこのmotionをとることによってStableな生活が保障されるのかどうかという点にかかってきます。よってPhilo.へのRefuteはしないか時間をかけない、その分を丁寧にpracticalRefuteに回してあげればいいのかな、と思います。

 Ex) THW make obese citizens fully pay their own medical expenses.

  これも似たような感じです。確かにGov.からGov.が健康を守るべきという分析が出てくるかもしれないけれど、結局健康を改善できるの?それがこの方法じゃなきゃいけないの??という点にかかってくると思います。よってこの場合においても、このPhilo.がプラクティカルな結果によることを言って丁寧にRefuteする方がいいと思います。

2) Practicalの切り方

 Practicalは切る場所を間違えない限り大きな問題はないと思いますが、そもそも何を目指してPracticalRefuteをするのかを考えてみるとRefuteしやすくなると思います。

何を目標にRefuteするのかを少し考えてみます。その目標に近づくのにどうしたらいいのかを跡で考えます。

PracticalRefuteGov.に対してする時はだいたい4つの目標があるんじゃないかな、と思います。

Problemはそこまで深刻ではない ②ProblemがあったとしてもこれがUniqueな方法ではない ③Solvencyがない(故にBenefitはおこらない) ④Benefitがあったとしてもさほど重要じゃない。

逆にOpp.に対してする時にも4つくらい目標があると思います。

 もちろんこれらの目標に対する比重は、Motionによって、またはとりうるstanceによって変わってくるところだとは思いますが、基本的には上の4つの目標がベースになると考えて良いと思います。

 以上の8つを分析すると結局は①SQの分析、②各々のBenefit/Harmに至るmechanismの分析、③ImpactCompare、④MotionUniquenessの分析とまとめることができると思います。以下概論的にはなりますがそれぞれについて見ていこうと思います。

 SQの分析

  SQの分析をする前提として、絶対に現実世界を忘れないこと。Motionを見たときにぱっとProblemが想像できるようなmotionにおいてproblemを否定することは難しいです。そもそもDebatemotionになっているものは何かしらのproblemがあるからこそmotionになっているはずなので、ぱっとみてproblemが思いつくレベルのmotionではいたずらにproblemを否定したりとか、逆にそのproblemの分析ばかりに時間をかけすぎないことを勧めます。

  この前提を踏まえた上でSQproblemについて争いになる場合を考えたいと思います。SQproblemOpp.が何等かのRefuteで否定してきた場合には、Gov.は知っているならFactを出すこと、その上で相手のlogicRefuteし、さらにそのproblemをイラストするなどの対処をするといいと思います。逆にOpp.として相手のproblemを否定したい時には、まずそのproblemGov.の言うような理由で起きているのか、仮にそうだったとしても現状がそんなにひどいのか、などを考えてみるといいのかな、と思います。

  Ex) THW set a quota on females in the board of directors of business corporations.

  このmotionではOpp.problemを全否定することは厳しいだろうことを念頭においた方がいいですね。Gov.は女性が昇進しにくいなどのproblemを話すことになると思います。それに対してOpp.は女性だって能力があればある程度昇進できる、企業は利益追求団体だし。などの反論がきます。これによってOpp.は一定Gov.の提示したproblemがそこまでひどいものではないことを言えます。そしてOpp.は仮に今問題があったとしても法制度の改定に見られるようにある程度Gradual changeが起こりつつある。にもかかわらずこのmotionをとってしまうことは女性に逆風になる。という感じできたとします。この時Gov.としてはGradual changeに任せられないくらいのproblemが今起こっている、ということを証明したいですね。この時一番強いのは今実際に起こっているFactをいう事です。実際女性のboard of directors of business corporations.に占める割合は1ケタのパーセンテージです。(詳しくはリサーチしてください。) そして働きたい女性が働けないという不平等の中にある。いくら企業が利益追求団体であったとしても、たとえば同じくらいの能力を持った男女がいたら、例えば趣味があう男の部下を採用したりしている。などのRefuteをすることでproblemを守れますね。

以上からFactがある程度の強さを持つこともわかりますし、caseをより具体的にすることによってどのようにProblemが起こっているのかを明確に伝えられると同時に相手のRefuteの前提(企業は利益追求団体)を共有した上でRefuteができると言えます。またここで強調したいのはFactを使うRefutelogicへのRefute、2つの種類がある、ということです。覚えておくと今後役立つと思います。

②各々のBenefit/Harmに至るmechanismの分析

 相手のImpactが起こらないというためには、まず冷静に相手がどういうlogicで話しているのかを聞くことが1番大切です。その上で相手のBenefitproblemの間にあるパイプが太いか細いかを判断します。またはHarmmotionの間にあるパイプが太いか細いかを見ます。ここでいうlogicにたいするRefuteはそのパイプを切ってあげる作業と考えてもらえれば良くて、太いパイプでつながっているときにはしっかりRefuteしなければならず、あまり太くないパイプでつながっているときには軽くRefuteして他の所を伸ばすなり、Even if Compareした方がいいのかな、と思います。

 Ex) THW ban Death penalty.

 Opp.が死刑制度による抑止力がAPでなくなるから犯罪が増加する、というアーギュメントを立てたとします。この時Opp.のインパクトとmotionの間のパイプを確認してみると、死刑という強力な罰則が消えれば、自分が殺されることはないと思って犯罪をしやすくなるという類のAnalysisがパイプになっています。

 作業は次の3つです。

 まずパイプがImpactに行きつかないで切れてしまっていること

  死刑がなくなったから犯罪が増えるというのは少々乱暴な話です。死刑にならなくても重く罰せられることには変わりはありません。死刑に値するような罪は死刑がなくなったとしても、終身刑や無期懲役に処せられる以上、死刑がなくなったからといってすぐに犯罪がそんなに増えるかというとそうではないという風に思われます。

 次にパイプ自体がRefuteによってきれること

  犯罪者は犯罪を犯す時に死刑があるかないかなんて考えていないし、考える余裕もないくらいIrrationalになっていたりとか、そもそも性格的に自分の思った通り行動したいという強い傾向をもっているからこそ死刑に値するような犯罪を犯しているのだと思います。つまり死刑に値するとかあまり考える余裕はないために、抑止力はそこまで大きな意味をなさず、よってOpp.の主張するようなHarmも起こりえないと言えると思います。

そしてパイプが非常に少ないこと(Compareへの布石)

 仮に抑止力に意味があったとしても、上記のRefuteから、抑止力が意味をなす行為者はいたとしても少数であると言えると思います。よってOpp.のいうHarmはそれほど大きくはありません。この大きくないHarmと自分たちGov.が押すBenefitを比較した時に、Opp.のいうHarmを優先する理由はないと言えます。

 以上がPracticalでいうlogicを切るという作業の1例だと思います。Benefitそのものを切るんじゃなくて、そこにいたるパイプを切っているんだというイメージ…人それぞれイメージは違いますが、ただ自分たちのアーギュメンとを押し付けているだけ、と言われがちな人はまず自分の中でこうしたRefuteへのイメージを作ってみるといいと思います。

ImpactCompare

 たまにインパクトも完全に切ろうとすることを目指す人がいるかと思いますが、個人的には無理じゃないのかな、と思います。ディベートになっている以上は何等かのlogicBenefitHarmが起こるということが言えると思うので。加えてWhipの仕事は相手を切る、ということではなくて、ベンチとして勝つために必要な仕事をすることかと思います。故に自分たちのケースとコンペアをすることで勝ちを示してみてはどうでしょうか。

 この時に注意すべきことがあります。

 たまにただひたすら描写を加えてコンペアをする方もいますが、これは相当具体化するなどの特筆すべき表現がない限り、具体化だけで有効なコンペアをすることは難しいと思います。

 コンペアになれないうちは基本に立ち返りましょう。

 NAのディベートでインパクトを示す時に、Quality, Quantity, Term,など他にもあるかと思いますがcriteriaを習ったことかと思います。それと一緒です。自分なりのcriteriaを設けて、この点でコンペアした時に勝っている、という証明をしましょう。というのも、全ての場面において勝っているBenefit/Harm等はなかなか存在しませんし、fairであるべきJudgeとしてはディベータ―かたセットされたcriteriaに沿ってディベート全体を見直すことが可能になります。だからこそ明示的にcriteriaをセットしたコンペアは何のcriteriaを設けないコンペアよりも一定程度説得力があるのではないかと考えます。

 

MotionUniqueness

 本当にこのmotionじゃなきゃ解決しないの?? 本当にこのmotionだからHarmが生じるの?? など、Motionmatterのリンクに疑問を持つことから、Motionuniquenessについての反論が始まるかと思います。ここの点を意識することは、むしろコンストの際にも非常に有用かと思います。

 

3)補足する点

ここまであたかも形式論について書いてきました。勿論ラウンドの中では臨機応変に対応することが求められますし、人それぞれの考え方があるので、この形式論の有用性は限られたものです。

ただ個人的には、最初というのは型が大切なのではないのかな、と思っています。

思い出せば最初にサークルに入った時、先輩方に教えていただいたのは、AREA SQ APといったいわばDebateの型についての概念でした。ならばWhipを初めてやるときも、最初は自分なりの型を用意しておいて、だんだん慣れてきたらどんどん自分の思うように人によっては型を変形したり、人によってはもう型なんて無視してどんどんいい反論を飛ばすのも良いかと思います。最初は先輩が作ってくださったレジュメを見ながらコンストしていたのに、今になってはもうその紙がなくても話せるようになったみたいに。

こうした意図…どんな時でも基本に立ち返りましょう、という意図…のもとで、今回の記事は書きました。

参考になるところが一つでもあればいいな、と思います。

 

読んでいただきありがとうございました。